診療活動と臨床研究

間質性肺炎をはじめ診療上鑑別の難しい疾患群の日常診療を通して、病態解明に取り組んでいます。特に原因不明の「特発性間質性肺炎」は厚生労働省 特定疾患に指定される難病です。患者さんの予後改善を目標に、病態解明と並行して、治療薬開発に取り組んでいます。近年治療薬に認可を取得したピルフェニドンも薬効の証明に当科は中心的役割を担ってきました。現在、第2、第3の治療薬開発に国内のみならず国際共同研究に邁進しています1)。

「特発性肺線維症の急性増悪」は極めて予後不良の病態とされていて、世界中でその抑制治療が検討されています。本研究施設では血液浄化治療(PMX-DHP吸着カラムを使用)を用いて、生命予後の改善に取り組んでいます(先進医療B認定)2)。

また呼吸器の「稀少疾患」は製薬企業が医薬品開発に乗り出しにくい対象ですが、サルコイドーシス、肺胞タンパク症、難治性血管炎、リンパ脈管筋腫症など個別に対応が異なる疾患が含まれます。全身を侵す可能性のあるサルコイドーシスでは、眼科、皮膚科、循環器内科と協力して、早期診断と治療に取り組んでいます。

リウマチ・膠原病や血液疾患に併存する呼吸器疾患、ならびに癌治療の副作用に対して、他科との連携をとり、総合治療に対応しています。

1) Azuma A, et al. Am J Respir Crit Care Med 171: 1040-1047, 2005
2) Abe S, et al. Intern Med. 51(12): 1487-91, 2012.

びまん性肺疾患の基礎研究

間質性肺疾患や気管支の上皮細胞に対する I)障害性物質(活性酸素種、蛋白分解酵素など)の消去、中和に関する研究3)、II)脆弱性(熱ショック蛋白の産生抑制など)の研究4)、III)線維化を誘導する細胞(上皮・間葉細胞形質転換(EMT)、骨髄由来線維細胞(fibrocyte))に関する研究を行っています5, 6)。病態の解明と並行して、これらの病態進行を抑制する治療薬の探索、既存薬(ピルフェニドン、NAC他、開発中の線維症治療薬)を併用した際の効果判定を通して、すでに臨床現場で併用されている医薬品の再評価(DR:drug repositioning)を行っています。

3) Tanaka K, et al. Chest 142(4): 1011-9, 2012.
4) Tanaka K, et al. Biochem Pharmacol. 80(6):920-31, 2010.
5) Namba, T., Cell Death and Differ. 17: 1882-95, 2010.
6) Inomata M, et al. Respir Res, (in press) 2014.

マクロライド療法は抗菌薬がびまん性汎細気管支炎(DPB)の予後を著しく改善した治療ですが7)、現在では慢性副鼻腔炎やCOPDをはじめとする好中球性気道炎症、重症肺炎や季節性インフルエンザの重症化回避などに効果が期待されています8)。慶応義塾大学薬学部との共同研究を通して、さらに多くのDRを目指しています。

7) Yamaya, M, et al. J Am Geriatr Soc 56(7): 1358-1360, 2008.
8) Azuma A, et al. Respir Investig, 51(4): 257-9, 2013.

患者・ご家族の皆様へ

間質性肺炎(びまん性肺疾患)のセカンドオピニオンを希望される患者様は診療時間とは別に時間を設けて対応いたします。医療連携室(代表03-3822-2131、内線6471)へお尋ね下さい。ご希望に合う日程調整をさせていただきます。