薬剤性肺疾患

あらゆる薬物療法が呼吸器に副作用を起こす可能性があり、薬剤に起因する呼吸器疾患は年々増加してきています。薬剤が関連する呼吸器疾患は、間質性肺炎を中心とする薬剤性肺障害のほか、時に感染症であることもあります。また、薬の副作用なのか、薬と関係のない疾患なのか診断に悩む症例も多く、複雑な疾患領域と言えます。この領域は薬物療法の発展とともに、益々重要な問題になってきています。他の診療科から相談を受ける機会も多く、そのような場面で患者さんを上手にマネージメントできるようになることも、呼吸器内科医に求められる技量です。当科は工藤名誉教授・弦間教授を中心に薬剤性肺障害の問題に取り組んできており、社会貢献もしてきた歴史があり、それらを日常診療に生かし、臨床から得られた問題点を研究につなげる努力をしています。

論文等業績

  1. 齋藤 好信, 弦間 昭彦 医学と医療の最前線 薬剤性肺障害の最前線 日本内科学会雑誌 第100巻1号 P199-207. 2011年
  2. 齋藤 好信, 弦間 昭彦 【肺癌化学療法の副作用対策-その常識と解釈-】 肺毒性 日本胸部臨床 第70巻7号 P708-717. 2011年
  3. 齋藤 好信, 弦間 昭彦【分子標的薬剤・生物学的製剤と肺障害】 mTOR阻害薬(エベロリムス、テムシロリムス)による肺障害 成人病と生活習慣病 第41巻7号 P849-854. 2011年
  4. 齋藤 好信, 弦間 昭彦 【薬剤性肺障害】 抗がん薬(分子標的治療薬も含む)による肺障害 呼吸器内科 第20巻2号 P124-130. 2011年
  5. 齋藤 好信, 弦間 昭彦 【薬剤性肺障害】 抗がん薬(分子標的治療薬も含む)による肺障害 呼吸器内科 第20巻2号 P124-130. 2011年
  6. 齋藤 好信, 弦間 昭彦 副作用対策のコツとピットフォール 薬剤性肺障害 外来癌化学療法 第2巻3号 P184-185. 2011年
  7. 齋藤 好信, 弦間 昭彦 QOLを考えた支持療法のすべて 間質性肺炎への対応臨床腫瘍プラクティス 第7巻4号 P420-423. 2011年
  8. 齋藤 好信, 弦間 昭彦 がん化学療法・分子標的治療薬と間質性肺炎 診断と治療 癌と化学療法 第38巻13号 P2531-2537. 2011年
  9. 向井 陽美, 大屋敷 一馬, 加藤 貴雄, 楠本 昌彦, 弦間 昭彦, 酒井 文和, 杉山 幸比古, 畠 清彦, 福田 悠, 工藤 翔二 日本人におけるボルテゾミブ治療関連肺障害の発現状況 臨床血液 第52巻12号 P1859-1869. 2011年
  10. Saito Y, Gemma A. Current status of DILD in molecular targeted therapies. Int J Clin Oncol. 2012 ;17(6):534-41.
  11. Saito Y, Kunugi S, Suzuki Y, Narita K, Miura Y, Minegishi Y, Kimura G, Kondo Y, Azuma A, Fukuda Y, Gemma A. Granuloma-forming Interstitial Pneumonia that Occurred One Year After the Start of Everolimus-Therapy. Intern Med. 2013; 52(2): 263-7.
  12. 齋藤 好信, 弦間 昭彦 医薬品副作用学(第2版)-薬剤の安全使用アップデート- 副作用概論 薬効群別副作用 抗がん薬 肺障害 日本臨床 第70巻増刊6 医薬品副作用学 P159-165. 2012年
  13. 弦間 昭彦 医薬品副作用学(第2版)-薬剤の安全使用アップデート-特論 癌分子標的治療薬の副作用 日本臨床 第70巻増刊6 医薬品副作用学P751‐765. 2012年
  14. 齋藤 好信, 弦間 昭彦 間質性肺炎と臨床検査 抗癌剤による間質性肺炎 臨床検査 第56巻9号 P997-1000. 2012年
  15. 齋藤 好信, 弦間 昭彦 呼吸器内科に聞く!見逃せない病態と対処法 間質性肺炎(乳癌治療との関係から) Cancer Board 乳癌 第5巻2号 P166 -169. 2012年
  16. 齋藤 好信, 弦間 昭彦 【分子標的薬の有害事象とその対策】分子標的薬による肺毒性とその対策 臨床外科 第67巻7号 P897 -901. 2012年
  17. 齋藤 好信, 弦間 昭彦 乳癌薬物療法における支持療法⑤ 間質性肺炎 乳癌の臨床 第27巻6号 P703 -707. 2012年
  18. 齋藤 好信, 弦間 昭彦 分子標的治療薬の副作用マネジメントのコツ 呼吸器系副作用 泌尿器外科 第25巻11号 P2099 -2104. 2012年
  19. Yoshizawa K, Mukai HY, Miyazawa M, Miyao M, Ogawa Y, Ohyashiki K, Katoh T, Kusumoto M, Gemma A, Sakai F, Sugiyama Y, Hatake K, Fukuda Y, Kudoh S. Bortezomib therapy-related lung disease in Japanese patients with multiple myeloma: Incidence, mortality and clinical characterization. Cancer Sci. 2013 Dec 14. doi: 10.1111/cas.12335.
  20. Shiozawa T, Tadokoro J, Fujiki T, Fujino K, Kakihata K, Masatani S, Morita S, Gemma A, Boku N.Risk factors for severe adverse effects and treatment-related deaths in Japanese patients treated with irinotecan-based chemotherapy: a postmarketing survey. Jpn J Clin Oncol. 2013;43(5):483-91.
  21. Saito Y, Nagayama M, Miura Y, Ogushi S, Suzuki Y, Noro R, Minegishi Y, Kimura G, Kondo Y, Gemma A. A case of pneumocystis pneumonia associated with everolimus therapy for renal cell carcinoma. Jpn J Clin Oncol. 2013; 43(5):559-62.
  22. Horiuchi-Yamamoto Y, Gemma A, Taniguchi H, Inoue Y, Sakai F, Johkoh T, Fujimoto K, Kudoh S. Drug-induced lung injury associated with sorafenib: analysis of all-patient post-marketing surveillance in Japan. Int J Clin Oncol. 2013;18(4):743-9.
  23. 齋藤 好信, 弦間 昭彦 がん診療UP TO DATE- 第Ⅴ章 副作用のマネジメント 6. 肺毒性 日経メディカルブックス P778 -786. 2013年
  24. 齋藤 好信, 弦間 昭彦 Everolimusによる肺障害 臨床的特徴,診断,治療について Annual Review 2013 呼吸器 中外医学社P125-130. 2013年
  25. 齋藤 好信, 弦間 昭彦 抗がん薬(分子標的治療薬)による肺障害 アレルギー・免疫 第20巻3号 P389-395. 2013年
  26. 齋藤 好信, 弦間 昭彦 【抗がん剤外来治療コンセプトシート2013】 外来での有害事象管理 BortezomibとmTOR阻害薬による間質性肺疾患 医学のあゆみ 第246巻9号 P794 -799. 2013年
  27. 齋藤 好信, 弦間 昭彦 【内科領域の薬剤性障害-肝・肺を中心に】 薬剤性肺障害【知っておきたい薬剤性肺障害】 分子標的治療薬による薬剤性肺障害 医学のあゆみ 第248巻1号 P103-107. 2014年

肺疾患合併肺癌

肺癌の主たる原因が喫煙・タバコ煙であることは言うもでもありませんが、肺癌には同じく喫煙と深く関与する様々な呼吸器合併症(肺気腫、間質性肺炎、慢性気管支炎など)をしばしば伴います。なかでも間質性肺炎は高頻度に肺癌を合併することは明らかです。他の肺疾患と異なり、間質性肺炎の合併は化学療法をはじめ、外科切除、放射線治療など抗癌治療により致死的な呼吸不全(間質性肺炎急性増悪)を誘発することが広く認知され、重大な治療制限因子となっています。当科の工藤翔二名誉教授が中心となり実施されたイレッサによる肺障害に対するコホート内ケースコントロール研究により、既存の間質性陰影の有無がイレッサのみならず通常の化学療法においても重篤な呼吸不全の危険因子であることが統計学的にも明らかとなり、以降、今日に至るまで間質性肺炎合併肺癌は肺癌研究の主要テーマとして全国の医療機関で活発に研究がなされています。当科は本分野では先駆的役割を果たしており、独自に臨床研究を実施・報告すると同時に厚生労働科学研究 難治性疾患克服事業「びまん性肺疾患に関する調査研究班」おいては間質性肺炎合併肺癌の標準的化学療法確立の中心的役割を担っており、これを広く発信し社会的にも貢献しています。今後はさらに安全かつ有効性の高い治療を確立すべく、治療法に関する臨床研究を進め、さらに重篤な呼吸不全の原因となる因子を特定するための基礎研究も推進中です。

論文等業績

  1. Uematsu K, Yoshimura A, Gemma A, et al. Aberrations in the fragile histidine triad (FHIT) gene in idiopathic pulmonary fibrosis. Cancer Res 61: 8527-8533, 2001.
  2. Kudoh S, Kato H, Nishiwaki Y, et al. Interstitial lung disease in Japanese patients with lung cancer: a cohort and nested case-control study. Am J Respir Crit Care Med. 2008;177:1348-57.
  3. 水谷英明、弦間昭彦.特発性間質性肺炎に合併する肺癌の疫学と発症機序.医学のあゆみ 229:579-83、2009
  4. 峯岸裕司、弦間昭彦.特発性間質性肺炎合併肺癌に対する化学療法の現況と治療関連急性増悪に関する実態調査:びまん性肺疾患に関する調査研究班 平成21年度研究報告書,Page105‐7(2010)
  5. Minegishi Y, Sudoh J, Kuribayasi H, et al: The safety and efficacy of weekly paclitaxel in combination with carboplatin for advanced non-small cell lung cancer with idiopathic interstitial pneumonias. Lung Cancer 71: 70-74, 2011
  6. MinegishiY, KuribayashiH, KitamuraK, et al. The feasibility study of carboplatin plus etoposide for advanced small-cell lung cancer withidiopathic interstitial pneumonias. J ThoracOncol 6: 801-7, 2011
  7. 峯岸裕司,弦間昭彦.化学療法時の問題点とアンケート調査.日本胸部臨床 70:812-22,2011.
  8. 峯岸裕司,弦間昭彦.呼吸器合併症のある肺癌の治療と管理.呼吸と循環 59:305-12、2011
  9. 峯岸裕司、弦間昭彦.併存症を有する肺がんに標準的化学療法は適応できるか?.呼吸器内科 19: 319-326, 2011.
  10. 峯岸裕司、弦間昭彦.特発性韓質性肺炎合併肺癌の治療.Annual Review 2011 呼吸器科:204-11;中外医学社、2011
  11. 峯岸裕司.間質性肺炎合併症例における化学療法をどうしていますか?.肺癌診療Q&A:279-81;中外医学社、2011
  12. 峯岸裕司、弦間昭彦.間質性肺炎合併肺癌の最新治療戦略.Medical Practice 29: 84-86, 2012
  13. 峯岸裕司、弦間明彦.臓器障害を有する小細胞肺癌患者の治療.小細胞肺癌の治療2012-2014.コンセンサス癌治療 11:42-44, 2012
  14. 峯岸裕司.気腫、線維化と発癌.医学のあゆみ 242:906-11、2012
  15. 峯岸裕司、弦間昭彦.間質性肺炎合併肺癌の化学療法.成人病と生活習慣病 42:97-102、2012
  16. 峯岸裕司、弦間昭彦.特発性間質性肺炎合併進行/術後再発肺癌の二次治療以降の化学療法に関する実態調査:びまん性肺疾患に関する調査研究班 平成24年度研究報告書
  17. 峯岸裕司、弦間昭彦.合併肺癌の化学療法.特発性肺線維症(IPF)改訂版:276‐284;医薬ジャーナル社、2013
  18. 峯岸裕司、弦間昭彦.合併肺癌の化学療法.特発性韓質性肺炎の治療と管理:116-121;克誠堂、2013
  19. 峯岸裕司.間質性肺炎合併症例における化学療法をどうしていますか?.肺癌診療Q&A第2版:345-7;中外医学社、2013